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今の日本経済の実力がすべて日本製、メイド・イン・ジャパンであれば、円安というのは一つの選択であります。
うんと円安にして、そのあともう一回輸出を伸ばして景気を浮上させようというのも、一つの選択です。
今の日本経済の実力というのは、残念ながら全部日本製ではないのです。
株を支えているのは外国人投資家であり、この外国人投資家というのは大半と言っていいと思いますが、アメリカの投資家です。
アメリカの年金ですとかアメリカのヘッジファンドが、日本の株式市場を過去六、七年間ずっと支えてきていたのです。
日本経済の中でも、株式市場の部分は、日本製ではなくてアメリカ製だったのです。
アメリカ人投資家に株価を支えてもらわないと、日本の経済も金融システムも目茶苦茶になってしまうのです。
すでに日本の投資家は皆逃げ出してしまったのですから、彼らにまで逃げ出されたらお手上げです。
そのことにようやく気づいた大蔵省のスタンスは、そこでガラッと一八○度変わります。
それまでは「あんた、ドル債をいくら買うのか。
今すぐここでコミットしろ」とまで言っていた大蔵省が、年初から「日本の投資家は日本の資産を買うべきだ」とガラッと変わってしまったのです。
大蔵省は、円安の恐怖を知り、慌てたのです。
もしこれ以上ドル高円安ということになりますと、本当に外国人が持っている株を全部売り払って、とんでもないことになりかねなかったのです。
二月に、ベルリンでG7がありました。
そのときM蔵相が、おそらく日本政府として初めて、「我々は円安を望んでいるのではない。
円高を望んでいる」とはっきり言明したのであります。
外国人投資家が日本政府は円安を望んでいるのだろうと思って、日本株を売ってしまう前に、政府が望んでいるのは円高だと言って、彼らの懸念を払拭しようと努めたのです。
この発言は、それなりに効きました。
日本政府は今まで円安の話ばかりしてきたものですから、急に円高の話を始めると皆注目します。
「あれっ、円安の話じゃなかったの。
三塚さん、円高の話をしていますね」となります。
多くの大蔵省の人たちも、このキャンペーンもあって、外国人投資家が恐れた、日本株パニックに続く円安のパニックヘの懸念は取り越し苦労に終わりました。
円高になりますと、外国人投資家からしてみれば、ここで為替差益が出ます。
それなら日本株を持っていてもいいだろうということになるのです。
振り返って一九九一年から九五年まで、なぜ外国人投資家があれだけ日本株を買ったかというと、このとき円がずっと上がっていたからなのです。
企業収益は低迷し、日本株自体は全然元気がなかったのですけれども、円高が続いていれば外国人は一応そこで儲かるのです。
こうして円安が止まったこともあって、春先からちょっと株価は安定したわけですが、残念ながら、緊縮財政からくる日本経済の先行き不安については、なんら解決がされていませんでした。
つまりカットされた財政政策については、まったく事態が改善されないどころか、実際に消費税は引き上げられ、特別減税は廃止になり、大型補正は見送りになる。
社会保障費はアップとなり、外国人投資家らの懸念がどんどん表面化してきたのです。
財政政策を切った当初は、消費税前のかけ込み需要などがあり、まだ少し景気はよく見えたものですから、外国人投資家も日本政府の話を聞いて大丈夫だろうと静観していました。
だが、やはりというか、景気は失速していきます。
景気が失速すれば、当然企業収益は悪化し株価は下落します。
外国人投資家は、財政の柱を切ったら全部家は崩れてきたねと、再び株を売り始めたのです。
株を売り始めると、株価は下がります。
株価が下がり今くらいの水準になりますと、銀行の貸し出し余力と株価がまったく機械的につながってしまいます。
株価が二万円とか二万五○○○円ですと、少々株価が下がっても銀行の行動には何の影響も出ないのですが、株価が一万五○○○円あたりまで下がりますと、自己資本比率の問題がすべての銀行を直撃してしまうのです。
そうなると、銀行はどうするでしょうか。
自己資本比率がもう足りなくなってきますから、資産を減らすことになります。
銀行の資産とはこの場合、企業に貸している貸し出しのことですから、資産を減らすということは、貸し渋りであります。
おそらく今日ここに来られた皆さんもここ数カ月、銀行のスタンスがどんどん変わってきていることにお気づきでしょう。
日本ではすでに、恐ろしい貸し渋りが始まっているのです。
先に申しましたように、九七年の二月に、大手二○行(今は一九行しか残っていませんが)でも一五兆円の資産をこれから減らすという話が出ていましたが、一五兆円というのはGDP比で三パーセントになります。
財政も一五兆円マイナス、大手二○行も一五兆円マイナスとなっては、どうやって日本経済を支えていくのでしょうか。
大手二○行だけで一五兆円ということは、全銀行ベースでいったらおそらく三○兆円とか四○兆円という数字になります。
それくらい彼らは、今資産を減らさなくてはいけないのです。
資産を減らすということは、お金を貸している皆さんに対して、「即刻、あの金を返してください」という話になります。
しかたがないから、借り手はお金を返します。
返したこの財政政策の話をしますと、多くの方々は「とんでもない。
日本政府は六五兆円も使って過去数年間にいろいろ財政政策を打ったのに、全然効かなかったじゃないか。
まだ日本経済には三八度の熱がある。
財政政策は効かなかったのだから、今は別のことをやるし結果として、例えば一五兆円が支えていた経済活動は、そこでストップすることになります。
そうすると、景気はもっと悪くなる。
もっと悪くなると、企業収益が悪化し、株がおかしくなる。
株がおかしくなると、銀行は同じ行動をとらざるをえなくなります。
そういう意味で今、悪循環に入ってしまったような気がします。
私がいろいろなテレビ番組に出ては、「株価を落としちゃいけない。
外国人投資家の懸念に対応しなければ大変な事態になる」と言っていたのは、まさにこの悪循環を懸念していたからです。
今の日本経済は、今日の株価の水準などを見ると相当厳しい世界に入り込んでいます。
ここまでくると、シートベルト着用サインがついているようなものです。
今、日本経済がガタガタになっているのは、すべて財政政策の失敗からきているのです。
かないのだ。
必要なのは、規制緩和に構造改革、行政改革だ。
財政政策なんて、せいぜいゼネコンが儲かるだけだ」と言います。
日本の主流派と言われるエコノミストやマスコミのほとんどは、こういう論調になっていると言っていいでしょう。
安易に財政政策に頼るべきではなく、公共事業などは全然役に立たないのだから、財政政策を続けていては、日本経済はよくならないというトーンに全部なっていますけれども、この論調はまったくのでたらめであります。
なぜでたらめかといいますと、財政政策をやらなかった場合の話が抜け落ちているからです。
この論調は、高価な財政という薬を患者さんに過去何年間も投入したのにまだ完治せず、三八度の熱がある。
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